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実録!特別養護老人ホーム |
特別養護老人ホームに勤め始めて7年目。
社会的にも問題になっている介護職員不足。
うちの施設でも人員不足が慢性化しております。でも問題はそれだけじゃない。
そんな老人ホームの実態を自分の経験を通して、コラム形式で語らせていただきます。
※サイト版では加筆修正を加えている場合があります、ご了承ください。
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NO.2 |
愛してるって言ってよ 12月 3日 配信 |
「生育暦」という言葉を知っていますか?
簡単に言えば、その人がどこで生まれてどういう風に育ったかという 人生の履歴書みたいな
ものです。 お年寄りを援助していく上で、その人の「生育暦」を知ることはとても重要です。
今回はその「生育暦」に関係するちょっと笑えるエピソード紹介します。
その利用者(以後Aさん)の方はは認知症も進んでいて、会話もほとんど 成立せず、
今ではほとんど寝たきり状態になってしまっているのですが、 そのAさんがまだ今よりもADLが
高く、歩くことが出来たときの話です。
Aさんは若い頃、銀座のスナックのママをしていたそうです。
確かにしゃべり方もそれっぽく、色っぽい感じでしゃべっていました。
先ほども言ったとおり、会話はほとんど通じないのですが、 「Aさん、今日はきれいですね」とか
「ステキですね」とか言うと、 「うふふ」ととても喜ぶのは、銀座のママとしてチヤホヤされていた頃の
記憶があるからなんだと、こういった生育暦があってのことなんだと、思ってしまいます。
その日は夜勤で、夜間Aさんをトイレに誘導しなければいけないときがあって、
でもAさんはあまり機嫌がよろしくなく、やむを得ず少し強引に介助をしていた ところ、
「どうしてそんな意地悪するのよ!」と怒ってしまいました。
当然ですね。
でも僕はそこで、「意地悪なんかしてないですよ」と返すと、
Aさんは、
「じゃあ、愛してるって言ってよ」
って言ってきました。
いやいやいや。ホントです。
うそじゃないです。
もちろん僕は「愛してますよ」と答えましたよ。
するとさっきまで怒っていたAさんは笑顔になり、夜間も落ち着いて休まれましたとさ。
銀座のスナックのママですからね。
恋多き女性だったのでしょう。 たくさんの男性から誘いを受けていたのかもしれません。
でも、この話を他の職員にしたところ、
「私はこの前、「殺してやる…」ってつぶやかれたわよ」。 と返されました。
銀座のスナックのママですからね。
数々の修羅場を潜り抜けてきたのでしょう。 時には殺意をいだくほど憎い男もいたのでしょう。
おしまい。
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